考古学を学ぶ、考古学者とは何か?

                                                    <p><span></span><h2><font color="#ff6600"></font>元考古学専攻生が伝える、考古学の「いま」<br></h2><p><br></p><p>知恵ノートで「考古学」を検索すると、未だ専攻生が書いた事例が見当たりません。</p><p></p><p><span>また知恵袋の進学関連カテにおいて、例えば「考古学に興味がある」とか「考古学者になりたいのですが」などの質問が見られるものの、実情を正しく記していない(明らかに専攻生以外が回答している)ケースも散見されます。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>現状では実際に進学先として考古学専攻を検討している高校生や、社会人になったけど再度勉強してみたいと思うようになった方などに</span><span>とって、情報量として極めて不十分な状況にあると言えましょう。</span><span></span></p><p><span>よって、指針とまでは行かないまでも、軽くアドバイスが出来たら…と思い小生の知る範囲で記してみようと思います。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>余談ですが、日本考古学では「考古学者」とは言いません。</span></p><p><span>仮に呼んでいる事例があるとすれば、新聞記者などが述べているだけです。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>通常は考古学「研究者」或いは「考古学徒」などと呼びます。</span></p><p><span>学者ではない、学び続けねばならないと、多くの研究者らは謙虚に考えています。</span></p><p><span>なお、題名・タイトルに「考古学者」と付けたのは、検索によって多くの目に触れる可能性を選んだからです。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>小生の経験上、考古学に関する質問で多いものは以下の3つに分類できます。</span><span></span></p><p><span>①日本考古学を専攻するなら何処の大学がいいか?</span><span></span></p><p><span>②エジプトなど外国考古学を勉強したい</span><span></span></p><p><span>③発掘調査員・学芸員・研究者になりたい</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>上記の解説に掛かる前に「古代史」について説明しておきます。</span><span></span></p><p><span>古代史は考古学に近いジャンルかもしれないが、ほぼ別と考えた方がいいでしょう。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>学問上で殊更に区分していませんが、古代史というと飛鳥・白鳳期を含み律令体制以降を指すケースが一般的です。</span><span></span></p><p><span>文献史料が限られ記紀や万葉集、木簡史料・漆紙文書などを駆使する点で、モノから考える考古学の比重も大きい(中世以降になると文献史学の比重が増えてくる)のが古代史の特徴ですが、やはり古代史として分けるべきで、考古学と一緒くたには出来ないと考えます。</span></p><p><span>※ただし遺跡調査の関係者には、古代史専攻生が結構な比率でいることも併記します。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>①日本考古学を専攻するには?</span><span></span></p><p><span>昨今、多くの大学で文化財関係の専攻を選べるようになりました。</span><span></span></p><p><span>教員の数も豊富で、様々なカリキュラムが編成されています。</span></p><p><span>その大半において、文系学部を選択(一部で総合科学系の場合もある)することになっています。</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>ただ重要な点があります。</span><span></span></p><p><span>貴方が「この先生から学びたい!」という強い意志がないならば、伝統的に知られている大学を選ぶ方が賢明です。</span><span></span></p><p><span>※まぁ特定の研究者に弟子入りしたい気持ちって、フツーは2~3回生以降で出てくるのですが</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>何故「伝統校」がいいのか?これには理由があります。</span><span></span></p><p><span>伝統的に知られた大学は、資料や調査実績が多いので研究を行うのに都合が良い点、業界に就職した<font>OB</font><font>が多数居るので就職情報を得やすい、そもそも教員の質も高い傾向にあるなどのメリットがあります。</font></span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>なので「何処それ?」というような学校だと、恐らく卒論あたりで資料見学すること一つ取っても、かなり苦労するはずです。</span><span></span></p><p><span>先で述べますが考古学は「モノ」を見てナンボの世界です、文献史料の方も史料を見た数が最終的にモノを言うことが多いように、実見した数が最終的にモノを言います。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>なので資料見学の時に「あー。○○さんの後輩ね!わかったよ!」となることのメリットは無茶苦茶大きいのです。</span><span></span></p><p><span>もちろん自力で人脈を築けるなら、それもアリだとは思いますが…。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>では、大学で言うと何処になるのか?</span><span></span></p><p><span>全国を網羅しているワケではありませんが、伝統的に考古学の関連紀要を作成していたり、研究者で<font>OB</font><font>が多い大学を北から思いつくままに列記してみます。</font></span></p><p><span>なお、日本考古学を念頭に書いていますのでご了承ください。</span></p><p><span></span><span>※独断と偏見ですが、べらぼうに違ってはいないと思います(後に編集する可能性あり)。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>北海道大学</span><span></span></p><p><span>東北学院大学</span><span></span></p><p><span>東北大学</span><span></span></p><p><span>東京大学</span><span></span></p><p><span>首都大学東京</span><span></span></p><p><span>東京学芸大学</span><span></span></p><p><span>早稲田大学</span><span></span></p><p><span>明治大学</span><span></span></p><p><span>國學院大学</span><span></span></p><p><span>立正大学</span><span></span></p><p><span>名古屋大学</span><span></span></p><p><span>富山大学</span><span></span></p><p><span>京都大学</span><span></span></p><p><span>大阪大学</span><span></span></p><p><span>大阪市立大学</span><span></span></p><p><span>立命館大学</span></p><p><span>同志社大学</span><span></span></p><p><span>関西大学</span><span></span></p><p><span>奈良大学</span><span></span></p><p><span>広島大学</span><span></span></p><p><span>岡山大学</span><span></span></p><p><span>山口大学</span><span></span></p><p><span>愛媛大学</span><span></span></p><p><span>九州大学</span><span></span></p><p><span>熊本大学</span><span></span></p><p><span>別府大学</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>以上になると思います。</span><span></span></p><p><span>なお今現在において、調査が盛んな大学もありますが既存の就職状況としてまだ歴史が浅い大学は省きました。</span><span></span></p><p><span>正直に言うとバブル期より以前の設置かどうかによって、明暗を分けているのが現状だと思います。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>この中で最も伝統があるのは京都大学です。</span></p><p><span>日本最初の考古学研究室が設置されたことでも知られており、京都が</span><span>戦災に遭わなかった関係で資料が豊富に残っています。</span></p><p><span>また戦中戦後を通じ、考古学研究で常に指導的立場の研究者を輩出してきた経緯もあります。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>関東では明治・國學院大学が、多くの研究者を輩出してきました。</span><span></span></p><p><span>現在でも業界に就職した<font>OB</font><font>の数やその分布で群を抜いており、大学教員になった卒業生も(私大としては)多いので、資料見学や就職の際など有利に働くと言えます。</font></span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>ほか、奈良大学と別府大学は埋蔵文化財(発掘調査)担当職員になった<font>OB</font><font>の数が多いことで知られています。</font></span><span></span></p><p><span>奈良大学は埋蔵文化財関係者全体の<font>10</font><font>%程度を占めているといいます。</font></span><span></span></p><p><span>同様に別府大学は地元自治体に強いとされ、九州の埋蔵文化財関係者の<font>20</font><font>~</font><font>30</font><font>%が同大出身者だと言われています。</font></span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>②外国考古学を学ぶには?</span><span></span></p><p><span>知恵袋では毎月1件くらい必ず「エジプト考古学を勉強したい」という質問が出ます。</span><span></span></p><p><span>吉村作治さんの影響なのか、早稲田大学などでエジプト考古学を勉強してみたいと考える方は多いようです。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>ただし思ったよりもハードルは厳しいです。</span><span></span></p><p><span>小生は日本考古学専攻だったので、さほど多くの情報を持っていませんが、想像よりかなり厳しい世界である点だけは述べておこうと思います。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span><br></span></p><p><span>実のところ①でも申しましたが、考古学は「モノ」を見てナンボの世界です。</span><span></span></p><p><span>なので日本に居てもモノに触れる機会は少なく、それだけを見て研究者になど絶対になれません。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>ですので現地に行くことが重要になります。</span><span></span></p><p><span>早稲田大学エジプト学研究所では、発掘調査を行っているものの一般学生の全員が行けるわけではないし、多くは自費で行っています。</span><span></span></p><p><span>※かつては科学研究費(通称・科研費)で学生をタダで行かせたりも出来ましたが…夢のようなお話ですね。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>ほか慶応大学や筑波大学、国士舘大学なども外国考古学に熱心な学校として知られています。</span></p><p><span><br></span></p><p><span><br></span></p><p><span>もちろん、本腰を入れて研究するとなれば現地語を話し、読み書きもして滞在(留学がベスト)せねばなりません。</span><span></span></p><p><span>日本で修士課程あたりまで進み、基礎論を理解してから海外の大学院などに進む…という流れが一般的なのだそうです。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>仮に留学後に卒業しても、科研費を申請できて認可までいけるのは本当に一握り…それなりの研究もせねばなりませんし、恐らくそこに至るまでに当然自腹も生じるはずです。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>余談ですが知人は某旧帝大で修士号を取得し、海外青年協力隊(<font>JICA</font><font>)の考古学関係で派遣され、当地の大学で教員もしていました。</font></span><span></span></p><p><span>これだと海外考古学を勉強でき、お金も貰えるので一石二鳥…かもしれませんが、派遣される国を選べないデメリットもあります。</span><span></span></p><p><span>※選考段階で修士号以上を求められる可能性が高いです</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span><参考リンク></span><span></span></p><p><span>独立行政法人、国際協力機構<font>HP</font><font>・</font></span><span>エルサルバドル/考古学<font>OB</font><font>にインタビュー!</font></span><span></span></p><p><span><span>http://www.jica.go.jp/sapporo/enterprise/volunteer/interview_05.html</span></span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>③発掘調査員・学芸員・研究者になるには?</span><span></span></p><p><span>最後に就職について述べます。</span><span></span></p><p><span>現状で言うと、極めて厳しいのが本音です。</span><span></span></p><p><span>恐らく臨時職員や嘱託職員を何年もしつつ浪人している人が大半だろうと思います。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>分かりやすく述べる為に「発掘調査員」と書きましたが、実際にはそうした職名はなく、埋蔵文化財センター職員や市町村職員、博物館学芸員(郷土資料館の職員も含む)などが発掘を行っています。</span><span></span></p><p><span>多くは公務員や財団職員で構成されていますが、民間の発掘調査会社などでも募集を行っていることがあります。</span></p><p><span><br></span></p><p><span>また長野県や広島県などのように、埋蔵文化財センターに入る為に「教員採用試験合格」が条件になっている自治体も(数は少ない)あります。</span></p><p><span>この場合は教員採用試験の一次試験に合格し、それから配属という格好になります。</span></p><p><span>なお、上記自治体の場合「音楽の先生なのに発掘を担当する」ようなケースが発生するらしく問題化していることもあって、二次試験は比較的合格しやすいそうです。&nbsp;</span></p><span><p><br></p><p><br></p></span><p><span>このほか埋蔵文化財センターや市町村の募集だと、公務員試験(地方上級など)になりますが、この情報を得るのに先の<font>OB</font><font>情報がモノをいいます。</font></span><span></span></p><p><span>公務員系…特に市町村レベルの募集は、地元で一瞬公募して即時試験というケースが多いので、逃すと受けられずに終わります。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>なので、先輩が多いと「○○市は定年する人がいるから来年度募集するらしい」などの情報をイチ早く得られます。</span><span></span></p><p><span>また試験内容も専門試験についてある程度尋ねられる(もちろん内部情報は教えて貰えませんが、先輩の時どんな試験だったかは聞くことができます)ほか、二次試験の時にも先輩情報があると有利です。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>学芸員(考古学専攻)試験も、ほぼ同上の内容になるでしょう。</span><span></span></p><p><span>埋蔵文化財センター職員にせよ、修士号以上の学歴を求められるケースが一般化していて、学部を出て試験を受けることもできますが、上記にあるように臨職や嘱託をしながら何年も就職浪人するケースが多いようです。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>最後に研究者になるには、コレといったルートがあまり見当たらないのが最近の傾向にあると思います。</span><span></span></p><p><span>かつては東大・京大・阪大・東北大・九大などの旧帝大の院を出て、助教を経由し大学教員になるのが一般的でした。</span><span></span></p><p><span>&nbsp;</span></p><p><span>しかし近年では、埋蔵文化財センターの有望な職員を大学教員として引き抜くケースもあり、その道筋は様々です。</span><span></span></p><p><span>ただまぁやはり研究論文の本数がモノを言う点では変わっていませんので、地道に論文を書いて発表するというのが一番早い方法だと言えるでしょう。</span><span></span></p><p><span>※研究そのものの「流行り廃り」の問題もあるが今回は割愛</span></p><p><span><br></span></p><p><span><br></span></p><span><p><span><br></span></p></span><span><p><span>お疲れさまでした。</span><span></span></p><p><span>↓少しでもお役に立ったようでしたら</span><span>「ナイス!」</span><span>にクリックお願いします。</span><span></span></p><p><!--EndFragment--><br></p></span><p></p><!--EndFragment-->



                        <h2>このノートのライターが設定した関連知恵ノート</h2>
                        <ul>
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